拡大する写真?図版「ここですね」とにおいのもとを指摘する相馬秀樹さん。「臭気判定士」の国家資格を持つ=神奈川県鎌倉市内

 神奈川県鎌倉市内のとある分譲マンションの一室には、どこからかカビのような臭いが漂っていた。相馬秀樹さん(46)が床下収納のふたを開け、首を突っ込み、鼻をクンクンと動かして、つぶやいた。

 「あぁ、やっぱり臭うな。ここですね」

あちこち臭い……でも見当たらないカビ

 築十数年となるこの部屋に住んでいるのは50代の夫妻だ。2022年、夢だったマイホームとして購入した。「こんな生活になるとは想像していなかった」。妻はそう振り返った。

 住み始めてから半年ほど経ったある日、浴室の天井にある点検口付近からカビに似たにおいがすることに気がついた。23年春、気温が上がってくると、電気のスイッチパネルなど、部屋のあちこちにあるすき間から同じにおいがするように。だが、どこを探してもカビは見当たらなかった。

拡大する写真?図版においをかぐ相馬秀樹さん。「臭気判定士」の国家資格を持つ=神奈川県鎌倉市内

 脱臭剤を置いたり、すき間というすき間にテープを貼ったり、できることは全てした。それでも、においは消えなかった。「くさいより、寒い?暑いほうがマシ」。夏も冬も窓を開けっ放しにした。

 マンションの管理人や管理会社、リフォーム業者にも相談した。だが、「カビはない」「原因が見当たらない」などと言われ、八方ふさがりだった。「誰も助けてくれない」。売ろうにも買った人が困る。だんだんと、精神的に追い込まれた。

 一番悩んだのは、臭いが全身につくことだった。ある日には、自分からそのにおいがすることが嫌で、都心の駅で全身分の服を買い直し、着ていた服を全て捨てたこともあった。自宅の風呂場では、体や髪をきれいに洗ってもにおいがつくため、毎日近隣地域の銭湯まで通った。

 100万円以上を費やしてきたが、1年以上悩まされ続けた。次も原因がわからなかったら、もう諦めよう――。そう思って臭気調査を依頼したのが、相馬さんが所属する環境調査会社「オオスミ」(本社:横浜市)が展開する「ドクター?スメルグッド」だった。担当者は当時、夫婦にこう伝えた。「相当、鼻がきく人がいきます。大丈夫です」

原因のにおい、部屋に入ってすぐひらめいた

 相馬さんは「臭気判定士」の国…

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